COVID19危機により、多くのビジネス分野でコストの見直しや職場の縮小などが検討されています。タイの労働法によりますと、会社の経済事由や景気後退による従業員の削減は、「根拠のない解雇」として扱われ、従って以下の解雇金支払いの対象になります。
従業員が連続的に働いた期間 | 解雇金 |
1)120日以上、1年未満 | 30日分の賃金 |
2)1年以上、3年未満 | 90日分の賃金 |
3)3年以上、6年未満 | 180 日分の賃金 |
4)6年以上、10年未満 | 240日分の賃金 |
5)10年超 | 300日分の賃金 |
従業員を解雇することにより生じる可能性のある法請求としましては、以下が挙げられます。
- 適切な事前通知なく行われた従業員の解雇
会社は最低1支払期間前に従業員に解雇通知を行うことが求められています。例えば、直近の給与支払日が2020年5月29日の場合、解雇通知は2020年5月29日かそれより前に行われることにより、2020年6月の給与支払日以降有効になります。解雇通知をただちに有効とする場合、一か月通知の代わりに給与の支払いが求められます。
雇用契約書に特別な明記がなされている場合には、1か月以上の事前通知が求められる可能性もあります。例えば、三か月の事前通知が求められており、その従業員の解雇を2020年8月28日の給与支払日に有効としたい場合、解雇通知は2020年5月29日またはそれより前に行う必要があり、そうでなければ、通知に代わって三か月分の給与を支払う必要があります。
- 契約期間前の解雇
この場合、会社は残りの契約期間に発生する支払義務が生じる可能性があります。ただし、契約期間が2年以下で、その雇用が、通常の事業ではない場合や季節的要因を考慮した特別なプロジェクトのための場合には、雇用者は支払いを行う必要はありません。
- 不当解雇
例え労働法に従い適切に解雇金が支払われたとしても、解雇された従業員は不当解雇として裁判所へ訴えを申し出ることができます。この場合一般的に裁判所は従業員側に優しく、裁判所が行う最も多い判断は以下の通りです。
・当該従業員を再雇用するように雇用者に指示する
・当該従業員に賠償金を支払うように雇用者に命令する
これらを判断するにあたって、裁判所の検討事項は以下の通りです。
・この不要な従業員解雇を避けるために雇用者が何かアクションを起こしたか
・この解雇は正当な事由のもとに行われたか
裁判所は、ビジネス上の損失は従業員解雇の正当な事由とはみなさず、むしろ管理者のミスであると判断することにご留意下さい。
4.人材 削減の前に行うべきアクション
・事業継続について困難な問題に直面していること及び規模削減の可能性があることについて、事前に従業員に知らせること。
・人的資源の問題について、異なる部署間でのローテーション業務を行なうなど行動プランの設定。
・就業週や時間の削減、残業の休止、新しい雇用の停止、退職を早めるスキームなど、解雇に代わる解決策の検討。
・解雇やコスト削減のプロセスに入る前に、コンサルタント顧問などから法務アドバイスを得ること。
・「再就職支援サービス」を提供することで、解雇による影響を減少させること。
再就職支援 / キャリア移転サービス
前述の通り、従業員の解雇は従業員にとっても雇用者にとっても大きな痛手とコストを伴うことがほとんどです。従業員の視点に立ってみますと、仕事を失うことは人生で三番目に入るほどのストレスを伴い、当該従業員が解雇金で生計を立てながら新しい仕事を探している間、最適にデザインされ導入された再就職支援プログラムは職種の移転をより可能にし、多くのケースでより早く成功に導くことができます。さらに重要なのは、最適にデザインされ導入された再就職支援プログラムは、最近解雇されたばかりの従業員の状況をよりよく理解し、それに適した内容となっていることです。
カギとなる恩恵
・法律上の問題を避ける:質の高いキャリア移転プログラムを提供された従業員は、不当解雇により会社を訴える可能性がかなりの確立で減少します。
・企業イメージを保つ:解雇する従業員に再就職支援サービスを提供することで、メディアや従業員・その友人間の「悪い噂」を減少させることができます。
・解雇した従業員と良い関係維持に寄与する:多くのケースで退職した従業員はその後も同じ業界に留まることが多いため、解雇後も引き続き良い関係を築くことは将来のビジネスに非常に重要です。
・従業員からの信頼を得られる:退職した従業員に対して誠意を示すことは、引き続き会社に就業する従業員からの信頼を得ることができます。
再就職支援プログラム
再就職支援プログラムは、職を失った従業員が新しい職を得るまで、通常カギとなる4つのステージをを進みます。
- 受容:毎年数千人もの人々が解雇により職を失っていますが、その多くがその後よりチャレンジングでより高収入の仕事を得ています。このステージでのカギは、解雇されたのはその人々の職であり、その人自身が解雇された訳ではないことを理解してもらうことです。
- カウンセリング:従業員が自身で選んだキャリアにおいて、彼らのカギとなる強みや特別な才能を特定し理解するサポートをします。このステージでは彼らの強みや個性に最もマッチする役割を特定するために、多くの分析ツールが利用されます。このステージのゴールは、彼ら個人のコアスキルを特定することで、より適切な職探しにフォーカスすることができる様にサポートすることです。
- 準備:このステージのカギは、質の高い履歴書の作成及び自身のプレゼンテーション力を上げることです。ここでは履歴書でどのように自身をアピールするかをアドバイスすることで確実に面接へ進む様にサポートし、その後実際にその会社の雇用者と面接を行う際に、ベストな印象を与えられるようにアドバイスを行います。
- 職探し:良い再就職支援会社は市場で空きのある職についてアドバイスをすることができ、多くのケースでその空きのポジションが市場に公表される前に候補者に紹介することができます。再就職支援のプログラム期間中、候補者には担当者が付き、職探しのプロセスについてアドバイスやサポートを受けます。
RSM Thailandではヘッドハンティングやリクルートメントサービスを提供していますが、キャリア移転を支援する通常の要素に加えて、最近解雇された従業員への新しい職探しに特化した再就職支援プログラムをスタートしました。特にRSM Thailandが提供するサービスのコアな強みを生かして、リクルートメントサービスを提供するRSM Recruitment (Thailand) Limitedと弊社のリーガル部門により、RSM Thailandは解雇された従業員に対して市場での空きポジションのアドバイスを行い、雇用者に対しては従業員削減に対する法務アドバイスを行うなど、両局面からのアプローチとサービスが可能となっております。
新しい人材の雇用や人材削減に対する法務アドバイス、解雇予定の従業員に対する再就職支援プログラムの提供をご検討されております場合には、弊社までお気軽にお問い合わせください。
RSM Thailand ジャパンデスク 柳澤 Takako.Yanagisawa@rsmthailand.com